チューリッヒ歌劇場 2014 / 15 プログラム

004

チューリッヒ歌劇場の来年度のプログラムが発表されている。アンドレアス・ホモキ3期目のリードとなるが、プルミエは、オペラ10本、バレエは3本を核に構成された。

幕開けは、9月21日。ホモキ演出による、ワーグナーの「ローエングリン」。

11月には、日本でも人気の高いウィリー・デッカーの演出で、ベンジャミン・ブリテンの「ネジの回転 The turn of the screw 」が登場する。チューリッヒで半世紀ほど前に上演されたことがあるらしいが、珍しい演目だ。

クリスマスシーズンから新年にかけては、このシーズンにふさわしくモーツァルト最晩年の傑作「魔笛」を上演。ドイツのマインツ歌劇場のタチヤナ・ギュルバカが演出する。

006

バレエは、10月にクリスチャン・シュプック振り付けの「アンナ・カレーニナ」で幕を開ける。

1月。エドワード・クルグ、ウィリアム・フォーサイス、クリスチャン・シュプックの3人の振り付けで、「STRINGS」を上演。

バレエのプルミエ3作目は、「ジゼル」。大御所パトリス・バールの振り付けによる。

上の写真左から、ファビオ・ルイージ、アンドレアス・ホモキ、クリスチャン・シュプック。その隣りは、コマーシャル・ディレクターのクリスチャン・ベルナー。

シーズンを通して俯瞰すると、人気の高いオペラの数々を再演しながらますます挑戦的なプレゼンテーションをしてくるように見える。秋からの展開に、ヨーロッパを代表する名門歌劇場ならではの伝統と斬新なサプライズあふれる企画力を期待していきたい。

https://www.opernhaus.ch/

 

 

コメントを残す

オディロン・ルドン展 バイエラー財団美術館

papillons_home2

© Fondation Beyeler 2013, Switzerland

バイエラー財団美術館のサイトを開けたら光のなかをひらひらと蝶がたくさん飛んでいて、久しぶりにルドンに会いに行った。

オディロン・ルドン(1840-1916)。子どものころから物静かで、いつも瞑想にふけていた人だったという。

奇怪な化け物や蜘蛛、巨大な目玉。そして、首の載った台座へと系譜を追い、黒のパレットのノクターンを聞きながら、鮮やかな色彩を解き放つ次の部屋へと移動する。

パンドラの箱から飛び出したようなアポロンの馬車、仏陀の佇む草の聖地。花々に浮かぶオフェーリア、ベアトリックス。消えたと思ったらまた現れる、ひとつめ小僧のキュプクロス。鈍い空色に蝶が舞い、アネモネやガーベラの大きなブーケの大作が並ぶ。

同世代のフランス印象派の画家たちとは異なる作風から、あるいはまた、マラルメやボードレールなど文学者や批評家からの称賛によっても、ルドンは象徴主義の画家とカテゴライズされることが多いが、バイエラー財団美術館のキュレーター、ラファエル・ブ―ビエールRaphaël Bouvierもその位置づけをもとに、時代に提示したアイデアと革新性、主題とテクニックの重要性を解き明かしていく。

黒の世界と往復しながら色を混ぜ合わせたであろう色彩の魔術師は、すぐれた詩人でもあり、後の抽象絵画やモダニズムの出現に大きな影響を与えた。作品群は、ようやく名を知られる晩年へ、画家の亡くなる20世紀初頭へと向かっていく。

エントランスを入るとき、そして一巡して出てきたとき。目の前に広がるのは、ルドン・ ルージュと呼びたい花々の赤が、ぽつりぽつりと浮かぶ幻想の森のデコレーション・シリーズ。

チャコールを捨て、パステルであり、油彩であり、次第に色を使った作品のみを描くこのあたりの時代、ルドンはパリ、ロンドン、アムステルダムのコレクターの屋敷に飾るタピストリーや屏風を制作。ここに展示されている作品は、かつてのパトロン、ドメーシー男爵のブルゴーニュの城のダイニングルームの壁一面を飾っていた。

今回作成された年譜を見て知ったのだが、ベルリン、デュッセルドルフ、チューリッヒ、これらヨーロッパのドイツ語圏の街で初めてルドンの個展が開かれたのが、1914年だった。亡くなる2年前のことだ。
トリスタン・ツァラによるチューリッヒ・ダダ宣言が1916年だったことを思い出し、なるほど、そういう人々の影響下でチューリッヒでも紹介されたのかと合点が行った。

5月18日まで

IMG_8000

https://www.fondationbeyeler.ch/startseite

コメントを残す

春色ブルーのイースター

IMG_6293 (2)

暖冬のチューリッヒに飛び、春というよりは初夏のような日々を過ごして戻ってきたら、すっかりイースターグッズを買い忘れていた。テーブル用にきれいな藁が欲しかったのだが、あまりにも慌てていて逃してしまった。

ところが、不思議と以心伝心。こんな色が欲しいとイメージしていたものが、何と親しい友人から届いたバースデープレゼントの箱に敷きこまれていたのには、びっくり。

チューリッヒも東京も、花があふれる美しい季節。
今年の復活祭は、4月20日。

コメントを残す

Meat or Fish という名前のワイン

chicken_2400 Meat or Fish Wine

fish_2400 Meat or Fish Wine 2

山に囲まれた国のこと。かつては、海の魚を食したことがないというご年配の方が結構いらした。海のある国に旅行する機会などあまりなかった世代にとっては、そういうものだろう。

スイスに海はないけれど、水は豊かだ。種類は多くないものの、地元の魚料理もある。
例えば、ライン川の畔では、大きな脂ののった鱒の料理が知られる。湖からは淡水の魚が獲れ、うちの近くにはそれを扱う専門の小さな魚屋さんがある。ご主人は、夕方になると手漕ぎの船を出して漁をする。
エグリフィレEglifilet と呼ばれる湖の魚は、フリッターやムニエルにするととてもおいしい。

ここ5年ほどの間に魚の流通がかなり進化し、デパ地下の魚介の鮮度が上がってきたし、ワンランクアップのスーパーならばいい魚が手に入るようになってきた。

いつ行っても面白いのは、郊外に出店しているポルトガル系の魚屋さん。南欧の魚がずらっと揃い、今の時期ならまだフランスから運ばれた殻つきのオイスターが何種類も並んでいる。アジだのサバだのは開いてもらい、軽く塩をしてバルコニーに置いておけば、ここでは手に入らない干物を簡単に作ることができる。

1月中旬にリリースして間もなく、ヨーロッパのクリエイターの間でセンセーションを呼んでいるワインの広告。

熱帯のジャングルには、鳥の化身かと見紛う花が咲いている。空を飛ぶ魚も確かに存在する。魚と鳥が交配したら、こういうことになるのだろうか。

肉料理にも、魚料理にも。Meat or Fish という名前のワイン。
いさぎよいコミュニケーションが成功している。

食の冒険の最先端、スペイン、バルセロナから。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Client: Meat or Fish
Advertising Agency: Grey, Barcelona, Spain
Creative Directors: Angel Trallero, José Miguel Tortajada, Joan Mas
Art Director: Dani Páez
Illustrator: Lucas Pigliacampo

 

コメントを残す

クレスタ・チェア CRESTA CHAIR スイス・デザイン賞展 2013-2014

12_Furniture_Newcomer_Cresta_Chair_4

家具、ファッション、コミュ二ケ―ション、インテリア、デザインリサーチ、テキスタイル、プロダクト。2年に一度、この7つの分野の優れたデザインワークを讃える「スイス・デザイン賞 Design Prize Switzerland」の展覧会が昨年11月からスイスで開催されている。

同賞は、1991年に設立され22回を数えるが、今回は、アムステルダムの名門サンドベルグ・インスティチュートSandberg Instituteの副学長リースベス・イント・ホウト Liesbeth in’t Hout、ヘルツォーク&ド・ムーロンHerzog & de Meuronのシニアパートナー アスキャン・メルゲンターレAscan Mergenthaler、プロダクトデザイナーのジャスパー・モリソン Jasper Morrison など国内外から5名を審査員に迎えた。

エントリーは、スイス及び海外で活躍するデザイナー、プロジェクト、企業、大学などから。スイスで作られ市場に流通した製品もまた同様に資格を持つ。

選考基準は、デザインとしての質の高さ、美的一貫性、社会性、革新的ビジョン、経済的価値、そして、サステナビリティ。これらの要素を全て兼ね備えていることを条件とする。

各賞及びノミネート作品の詳細はサイトからご覧いただくとして、ここでは、家具部門での受賞作品、クレスタ・チェアCRESTA CHAIRをご紹介したい。

12_Furniture_Newcomer_Cresta_Chair_2

© Design Preis Schweiz

少女ハイジの世界にも登場する、素朴な手造りの椅子や家具。アルプスの山小屋やホテル、レストランでよく使われているスイスではお馴染の木工製品だ。
クレスタ・チェアは、これらスイスの伝統的なアルペンスタイルをベースに、最新の木材加工技術とモダニズムをブレンドしてデザインされたと言う。

古くから家具に用いられるスイスの松の木で作られたのかと、デザイナーのヨルグ・ボナーJörg Boner氏にお尋ねしたら、座面からバックへ流れるしなやかな曲線を描き、椅子に求める安定した高い強度を得るために、より硬く、弾力性に富んだトネリコを選んだと語ってくださった。将来的には、異なる木材で製作するバリエーションも検討しているそうだ。

3つのパーツをフィンガー・ジョイントで構成。木の持つ安らぎと寛ぎの心地良さを、削ぎ落したデザインと精巧なハンドメイドで実現した。

4つの言語を持つユニークな山国スイスは、各地のオリジンの文化にドイツ、フランス、イタリア、レート・ロマニッシュのテーストが融合している。

山と森と湖。点在する中規模の国際都市。

クレスタ・チェアは、豊かな自然とマルチカルチャーをバックグラウンドに、スイスデザインの今、を感じるさせる美しい椅子だと思う。

今年は、日本・スイス国交樹立150周年を迎える。デザインの世界でも、両国の交流がもっと活発になっていく年であるようにと願っている。

受賞作品、ノミネート作品は、世界を巡回していく。
スイスでの展覧会は、首都ベルンから東へ電車で30分ほど、チューリッヒからは1時間弱の距離、ランゲンタールLangenthalで開かれている。

2014年1月26日まで。
https://designpreis.ch/

 

 

 

コメントを残す