日本スイス国交樹立150周年を迎えた、2014年。この年の12月に、スイスのファッションデザイナー、カズ・フグラーさんのブランドKAZUは、両国の交流の象徴として1-5-0 ONE-FIVE-OH ブライダルクチュールコレクションを発表した。二つの国が共に歩み育んできた歴史、文化、そこに携わってきた多彩な分野の人々。日本人の母とスイス人の父を持つカズさんご自身も、この歴史のなかで生まれ、やがてファッションデザイナーという仕事を選ぶことになった。
初のブライダルコレクションは、「一体感、あるいは、共に生きること togetherness」をシンボライズしたと言う。それは、花嫁を祝福し幸多い未来を願う、カズさんからのメッセージでもあるように思う。
異なる家族、文化、価値観を人はそれぞれに持ちながら、世界のどこかで誰かを愛し結ばれるように。KAZUのブライダルコレクションは、二つの国で受け継がれるハンドクラフトが出会い、求め合い、絡み合って、今まで見たことのない地平へと、光を降り注ぐような美しさを生み出した。
浜ちりめんで名高い滋賀長浜の絹ちりめんで表現した、無限に多様な白とパステルの気品あふれるカラ―バリエーション。KAZUの長年のパートナーであるスイスの工房からは、シルクの中の女王と呼ばれるラグジュアリーな絹織物を。中央ヨーロッパでも、今やほとんど消えてしまった幻の技法で、数々のシルクスクリーンプリントを復活させた。
カズさんがプロデュースを続けている、東日本大震災の被災地復興プロジェクト「東北グランマ」(東日本大震災で被災したお母さん達のための仕事創りプロジェクト)とのコラボレーションからは、美しい花々が咲いた。陸前高田のグランマの皆さんと創作したハンドワークは、花嫁を飾るヘッドドレスやオーナメントとなり、誰よりも幸せな日にふさわしく、エレガントにやさしい頬笑みをたたえている。
photo ©Boris Marberg
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1-5-0 ONE-FIVE-OH ブライダルクチュールコレクションからセレクトしたドレスとKAZUの新作を、以下2日間、ご予約の上、東京平河町のKAZUプライベートショールームでご覧いただくことができます。
KAZUプライベートショールーム・展示会のご案内
日時
5月28日(木) 10:00 −20:00
5月29日(金) 10:00 −20:00
会場
北野アームス
東京都千代田区平河町2-16-15 #902
電話
03-3265-2371 (フロントデスク)
ご予約お問合せ先:トラフィック
TEL:03-3725-8877 FAX:03-3725-8841 email:traffic@traffic-pr.com
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家具、ファッション、コミュ二ケ―ション、インテリア、デザインリサーチ、テキスタイル、プロダクト。2年に一度、この7つの分野の優れたデザインワークを讃える「スイス・デザイン賞 Design Prize Switzerland」の展覧会が昨年11月からスイスで開催されている。
同賞は、1991年に設立され22回を数えるが、今回は、アムステルダムの名門サンドベルグ・インスティチュートSandberg Instituteの副学長リースベス・イント・ホウト Liesbeth in’t Hout、ヘルツォーク&ド・ムーロンHerzog & de Meuronのシニアパートナー アスキャン・メルゲンターレAscan Mergenthaler、プロダクトデザイナーのジャスパー・モリソン Jasper Morrison など国内外から5名を審査員に迎えた。
エントリーは、スイス及び海外で活躍するデザイナー、プロジェクト、企業、大学などから。スイスで作られ市場に流通した製品もまた同様に資格を持つ。
選考基準は、デザインとしての質の高さ、美的一貫性、社会性、革新的ビジョン、経済的価値、そして、サステナビリティ。これらの要素を全て兼ね備えていることを条件とする。
各賞及びノミネート作品の詳細はサイトからご覧いただくとして、ここでは、家具部門での受賞作品、クレスタ・チェアCRESTA CHAIRをご紹介したい。
© Design Preis Schweiz
少女ハイジの世界にも登場する、素朴な手造りの椅子や家具。アルプスの山小屋やホテル、レストランでよく使われているスイスではお馴染の木工製品だ。
クレスタ・チェアは、これらスイスの伝統的なアルペンスタイルをベースに、最新の木材加工技術とモダニズムをブレンドしてデザインされたと言う。
古くから家具に用いられるスイスの松の木で作られたのかと、デザイナーのヨルグ・ボナーJörg Boner氏にお尋ねしたら、座面からバックへ流れるしなやかな曲線を描き、椅子に求める安定した高い強度を得るために、より硬く、弾力性に富んだトネリコを選んだと語ってくださった。将来的には、異なる木材で製作するバリエーションも検討しているそうだ。
3つのパーツをフィンガー・ジョイントで構成。木の持つ安らぎと寛ぎの心地良さを、削ぎ落したデザインと精巧なハンドメイドで実現した。
4つの言語を持つユニークな山国スイスは、各地のオリジンの文化にドイツ、フランス、イタリア、レート・ロマニッシュのテーストが融合している。
山と森と湖。点在する中規模の国際都市。
クレスタ・チェアは、豊かな自然とマルチカルチャーをバックグラウンドに、スイスデザインの今、を感じるさせる美しい椅子だと思う。
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今年は、日本・スイス国交樹立150周年を迎える。デザインの世界でも、両国の交流がもっと活発になっていく年であるようにと願っている。
受賞作品、ノミネート作品は、世界を巡回していく。
スイスでの展覧会は、首都ベルンから東へ電車で30分ほど、チューリッヒからは1時間弱の距離、ランゲンタールLangenthalで開かれている。
2014年1月26日まで。
https://designpreis.ch/
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今年の春。チューリッヒのデザイン美術館でスイスのグラフィック100年の歴史を俯瞰した大変面白い展覧会があった。
アップするのが宿題になっていて、すみません。
それとは別にこのポスター。
いつ見ても、不思議で、久々に見たらやっぱり強烈なので、ご紹介したい。
日本でいえば牛乳協会。スイスミルクの1932年のポスターだ。
この年、ドイツではバウハウスがデッサウ Dessau からベルリンへ移り、すでにミース・ファン・デル・ローエ Mies van der Rohe が校長として指揮を執っていた。
スイスの現代美術は、今もベルリンとかなり交流があるが、グラフィックの歩みを振り返ると、デザインに大きく影響を受けていたことがわかる。時代を牽引した建築家らとともにバウハウスの思想がこの地で躍動していた。
多くの亡命者が暗躍跋扈していたチューリッヒの街に思いを馳せると、いつも私はドキドキしてくる。
JEDEM SEINE MILCH ひとりひとりに牛乳を。
近代へ向かう時代の空気が、ストレートに伝わってくる。
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3.11から1ヵ月半ほどしてこの広告を見た。その頃、ダライ・ラマは、アメリカ訪問の経由地として降り立つはずだった日本に予定より長く滞在し、東京護国寺で祈り、語っていたと大分経ってから知った。
いきなり目の前に現れた広告のダライ・ラマは、アメリカにいる。連邦議会の広間。
中国の人権問題と言えばまずこの政治家が筆頭に登場する。ナンシー・ペロシNancy Pelosは、かつてブッシュ政権下でアメリカ議会最高の褒章「下院金綬褒章Congressional Gold Medal」をダライ・ラマに贈った。これは、ダライラマが米国大統領と公の場で同席した初めてのケースであったが、その授与の場で、師は、ペロシの手を犬猿の仲であるブッシュの手に重ねた、という世界を沸かしたハプニング。瞬間、もうひとつの歴史をつくった。
07年のことだ。
“Great celebrities and current affairs. An experience page after page”
ページをめくるごとに、どれもこれもクオリティのトップを競い合えるほどの写真が連続し、キレるフレーズが目に飛び込んでくる。そこからアクシデンタルにも、読者は想像を超えた経験をしていく、ということか。
そう言い切るだけの洗練された雑誌であるし、手に取る自分が確かに賢そうに見えるかもしれない。
いかにもスイスドイツ語圏らしいタイポグラフィの美しさ、デザインのすきっとしたインテリジェンス。
彫刻家のデッサンをシリーズ化した昨年のEYE TRACKINGでは、素描から彫刻へ、平面でありながら3次元へと思考を導いたクイズのようなエスプリがあった。
Eye-cathcher からExperience へ進化し、3Dであることにコンセプトをからませる。昨年のシリーズに比べるとちょっと理屈が勝ち過ぎている気がしないでもないが、このヴィジュアルを現代アートだと思えば納得もできるし、チューリッヒならば、こういうお3方の蝋人形がどこかのギャラリーにありそうでもある。
アート&カルチャーマガジンDuならではのひねりの効いたコミュニケーション。
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Advertised brand: DU Magazine
Advert titles: Dalai Lama
Headline: Great celebrities and current affairs. An experience page after page.
Advertising Agency: Euro RSCG Zurich, Switzerland
Creative Director: Axel Eckstein, Frank Bodin
Art Director: Christina Wellnhofer
Copywriter: Ivan Madeo
Graphics: Dominique Magnusson
Photograper/3D-Artist: Markus Graf, Martina Broennimann
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湖には白鳥が浮かんでいます
森のリスやキツネたちは
雪に頭で穴を掘って 餌を探しているころです
人間と暮らすわたしたちは
みんなで一緒に新年を祝い
ぼつぼつ また働きはじめました
幸せな1年でありますように
楽しいことがたくさんおこる年でありますように
平和な年でありますように
今年もよろしくお願いいたします
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Photo:© Schweizer Milchproduzenten SMP • PSL