暖冬のチューリッヒに飛び、春というよりは初夏のような日々を過ごして戻ってきたら、すっかりイースターグッズを買い忘れていた。テーブル用にきれいな藁が欲しかったのだが、あまりにも慌てていて逃してしまった。
ところが、不思議と以心伝心。こんな色が欲しいとイメージしていたものが、何と親しい友人から届いたバースデープレゼントの箱に敷きこまれていたのには、びっくり。
チューリッヒも東京も、花があふれる美しい季節。
今年の復活祭は、4月20日。
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家具、ファッション、コミュ二ケ―ション、インテリア、デザインリサーチ、テキスタイル、プロダクト。2年に一度、この7つの分野の優れたデザインワークを讃える「スイス・デザイン賞 Design Prize Switzerland」の展覧会が昨年11月からスイスで開催されている。
同賞は、1991年に設立され22回を数えるが、今回は、アムステルダムの名門サンドベルグ・インスティチュートSandberg Instituteの副学長リースベス・イント・ホウト Liesbeth in’t Hout、ヘルツォーク&ド・ムーロンHerzog & de Meuronのシニアパートナー アスキャン・メルゲンターレAscan Mergenthaler、プロダクトデザイナーのジャスパー・モリソン Jasper Morrison など国内外から5名を審査員に迎えた。
エントリーは、スイス及び海外で活躍するデザイナー、プロジェクト、企業、大学などから。スイスで作られ市場に流通した製品もまた同様に資格を持つ。
選考基準は、デザインとしての質の高さ、美的一貫性、社会性、革新的ビジョン、経済的価値、そして、サステナビリティ。これらの要素を全て兼ね備えていることを条件とする。
各賞及びノミネート作品の詳細はサイトからご覧いただくとして、ここでは、家具部門での受賞作品、クレスタ・チェアCRESTA CHAIRをご紹介したい。
© Design Preis Schweiz
少女ハイジの世界にも登場する、素朴な手造りの椅子や家具。アルプスの山小屋やホテル、レストランでよく使われているスイスではお馴染の木工製品だ。
クレスタ・チェアは、これらスイスの伝統的なアルペンスタイルをベースに、最新の木材加工技術とモダニズムをブレンドしてデザインされたと言う。
古くから家具に用いられるスイスの松の木で作られたのかと、デザイナーのヨルグ・ボナーJörg Boner氏にお尋ねしたら、座面からバックへ流れるしなやかな曲線を描き、椅子に求める安定した高い強度を得るために、より硬く、弾力性に富んだトネリコを選んだと語ってくださった。将来的には、異なる木材で製作するバリエーションも検討しているそうだ。
3つのパーツをフィンガー・ジョイントで構成。木の持つ安らぎと寛ぎの心地良さを、削ぎ落したデザインと精巧なハンドメイドで実現した。
4つの言語を持つユニークな山国スイスは、各地のオリジンの文化にドイツ、フランス、イタリア、レート・ロマニッシュのテーストが融合している。
山と森と湖。点在する中規模の国際都市。
クレスタ・チェアは、豊かな自然とマルチカルチャーをバックグラウンドに、スイスデザインの今、を感じるさせる美しい椅子だと思う。
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今年は、日本・スイス国交樹立150周年を迎える。デザインの世界でも、両国の交流がもっと活発になっていく年であるようにと願っている。
受賞作品、ノミネート作品は、世界を巡回していく。
スイスでの展覧会は、首都ベルンから東へ電車で30分ほど、チューリッヒからは1時間弱の距離、ランゲンタールLangenthalで開かれている。
2014年1月26日まで。
https://designpreis.ch/
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モミの木は、日本の森から。シナモン、胡桃、干し林檎は、スイスから。バンホフ・シュトラッセで以前から欲しいと思っていたきれいな手刺繍のテーブルクロスを見つけてうれしくて、そうだ、12月になったらに登場させようと、楽しみにしていた。
少し早めに開いた東京オフィスのクリスマス・ディナー。ジェネレーションも情報も知恵もシェークしようと、世代を超えて集った女性たちは、いずれもいい感じに肩の力が抜けている、お洒落でチャーミングなワーキングウーマンだ。
会議が長引いているらしく、前菜担当、赤ワイン担当からショートメールが届いた。
「それじゃあ、ゆっくり待ちましょうよ」と、アぺロのシャンパンを開けると、とたんにお喋りに弾みがついてゆくが、今日のメンバー全員が勢ぞろいして席に着いた瞬間、ふっ、と立ち昇った空気に、「すごいねっ」と顔を見合わせるほど、部屋がキラキラ華やかになった。
夜が深くなるにつれ、話は来年のこと、未来のこと、それから、一緒にできそうなことも思いついたりして。人生のかなりの時間を知っている友達も、もっとずっと若い友達も、グラスを重ね、みんな幸せそうに笑っている。
素敵なイヴを。
メリー・クリスマス。
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東京に戻った時、偶然チューリッヒ歌劇場管弦楽団のソロチェリスト、金丸晃子さんから演奏会のご案内をいただいた。
日本チェロ界の先駆者である井上頼豊生誕100周年を記念する、門下生によるコンサートだった。
金丸さんのベートーヴェン、チェロ・ソナタ。バロックの第一人者、鈴木秀美氏のバッハ無伴奏組曲。小川剛一郎、銅銀久弥、山本裕康各氏のチェロと村上弦一郎氏のピアノによるポッパーのレクイエム。
こうした世界的なチェリストの演奏を3時間聴き続けるという、類まれな機会に恵まれた。
コンサートの最後に、この夜集った16人のチェリスト全員で演奏されたのが、パブロ・カザルスPablo Casalsの「鳥の歌」だった。
母国スペイン、カタロニアの民謡。カザルスは、この曲を1945年以降演奏し始める。故郷に思いを馳せ平和を願い、鳥が「ピース、ピースと鳴く」という曲は、キリストの生誕を祝う、クリスマス・キャロルでもある。
今年は、クリスマス・リースを作りながら、「鳥の歌 ー ホワイトハウス・コンサート」を部屋に流していた。ケネディ大統領に招かれ舞踏室で開かれた、伝説の演奏会。
クープランの前奏曲に移るあたりから、カザルスの絞り出すような唸り声が聞える。それが、このように記憶を引き出すとは意外だったが、いつの間にか、私はザリのことを考えていた。
2年間、ドイツ語学校で机を並べたクラスメート。アフガニスタンから亡命してきた、20代半ばという年齢よりは遥かにしっかりした女性で、私はいつも助けてもらっていた。
ある日、自分の育った家について語る授業で。彼女は、先生に許可を得ると、故郷の家を皆に見せたいと、教室の後ろに並んだコンピュータに向かった。
検索をかけ画面に現れたのは、イスラム建築の白く輝く壮麗なビラだった。没収された後、今はホテルになっているという。
「ご両親はお元気なの?」
「父も母も、私の目の前で殺されました」
帰り道。私の目をしっかり見つめて、彼女は答えた。
二人でトラムに乗った。
平和なイヴを。
メリー・クリスマス
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ユーチューブから
「鳥の歌 ー ホワイトハウス・コンサート」 Pau Casals – El cant dels ocells (at the White House)
http://www.youtube.com/watch?v=qKoX01170l0
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毎年12月が近づいてくると、今年のクリスマスは何色にしようかと考えだす。4本のキャンドルを立てるアドベントのデザイン、玄関のリース、そして皆が集まる部屋とテーブルのコーディネーション。
一度どこかで習って見ようと思ってスイス人の友達に尋ねたら、「そんな教室はないの・・・」と気の毒そうに言われてがっかりしたことがある。
子どものころから母親が作っているのを見たりお手伝いするうちに、何となく覚えていくもので、わざわざ人から教わるものではないのだそうだ。
健全な答えではある。
しっかりと組んだリースの土台はお店で売っているが、普段から玄関に飾っている木の枝や実は、森へ散歩に行ったときに探してくる。森のものは、森から運んではいけない。そういう約束も実際あるが、青々とした枝を切るのでなければ、許してもらおう。
市場で買ったモミの木の枝をひとかかえ。キャビネットの上に広げる。
部屋に森の匂いが流れてくる。
このコーディネーションでは、テーブルをクリスマスの森に見立てた。