コックさんは、世界中どこの国でも働くことができて、うらやましい職業のひとつだ。
チューリッヒには、イタリアンレストランがたくさんある。
1950年代、60年代に、とりわけ多くの人々が、ナポリ、シシリー、パレルモなどイタリア南部からチューリッヒに移ってきた。彼らやその2世がレストランを成功させていたり、レストラングループを運営していたりと、イタリアものの層が厚い。
そいうお店でいただくのと、これはちょっと違う。
グランマキッチンからもう1品、スイスイタリア語圏、ティチーノ州Ticinoのリゾット。
ティチーノは、チューリッヒあたりでは、「テッシンTessin」とドイツ語で呼ぶ。「今年は海外に出ないで、テッシンにしたの」と聞くと、湖の畔にゆったりと広がる大きな家を思い浮かべる。地中海のタッチのある、身近な夏のリゾートだ。
気候が温暖で食べ物がおいしい。南へ向かうので、車に乗っていてもだんだん気分が明るくなってくる。
リゾットのルーツとして一般的に知られているのは、ミラノ。ティチーノは、16世紀までミラノに属していたため、ティチーノ・リゾットは、より地方色のある料理といえるだろう。
ミラノのリゾットとの大きな違いは、サフランを使わず、ローズマリー、タイム、バジル、オレガノといったイタリアンハーブを使うこと。調理用の白ワインは、本来は、メルロMerlo del Ticino あたりか。
「リゾットは、お鍋のそばにずっとついていなければならない。日本の炊飯器は、すぐれものだ。ほら、君はピラフを作っていたでしょ。だから、できないはずはないと思ったんだ!!」
イタリアンのシェフが聞いたらケラケラ笑いだしそうだけど、彼のアイデアは、間違ってはいなかった。
リゾットライスを使った方がいいが、この日うちになかったので日本のお米で作った。
お米とやや少なめのブイヨン、パセリの茎とフレッシュ・ハーブを入れてスイッチオン。ブイヨンの量は、後で白ワインを加えるためここで調整する。
半分ぐらい焚けたところで炊飯器の蓋を開け、オリーブオイルで炒めておいた、玉ねぎ、にんにく、キノコ、それと白ワインを加えて混ぜる。
焚き上がったら、牛乳もしくは生クリーム、おろしたチーズを加えて混ぜ、塩、コショウで味を調える。それだけだ。
ここではお米を炒めていないが、「日本の炊飯器」のテクが最終的に辻褄を合わせているのだと思う。
ティチーノのグランマもびっくり、かもしれないが、かなりおいしかった。作り過ぎてしまったら、冷凍してもいい。