テッシーナ・ブラーテン

043

自然がすぐそばにあるせいなのか、スイスで生活していると火を熾すことがわりと身近にあるように思う。ヴィクトリノックスのキャンペーンではナイフの使い方を小さい頃から教えていたが、ある年齢になると、森に入って枝を拾い集めて石を組んでソーセージを焼く、そんな学童のピクニックを良く見かける。

だから、バーベキューが好きなんだ、というのは直裁過ぎるが、冬のフォンデュに対抗する春夏の料理の代表格は、何と言ってもバーベキュー。サラダとお肉のメニューのバラエティーが豊かだ。

テッシーナ・ブラーテン。これは、イタリア語圏テッシンの郷土料理でレシピも家族の数ほどあるのだろうが、チューリッヒがドイツ語圏のためなのかどうか、私は家で作るというシーンにはお目にかかったことがない。

大きいお肉を焼きたいなら、人が集まるという数日前にお肉屋さんに頼んでおいてピックアップする。

モモでもロースでも好みでいいが、チューリッヒあたりでポピュラーなのは、豚肉をベーコンでぐるぐる巻きにしたもの。

味の変化をつけようと、この日は、全体に粒マスタードを塗ってこんがり焼いた。でも、これは小ぶりのお肉だったので、少し焼き過ぎてしまった。本当はもっとジューシーな感じに仕上げる。

日本だと炭になった部分は身体に悪いと言われそうだが、ソーセージもお肉も、バーベキューでは焦げるぐらいに表面を焼いてその香ばしさを楽しむ。

052付け合わせは、グリーンサラダと、ポテト。ポテトは、クミンを振ってラードでじっくり焼いたものだが、オーブンに入れてしまってもいい。

秋になって、もう外では食事をするのはちょっとね、というほど涼しくなるまで、ご近所の庭から、バルコニーから、バーベキューのいい匂いが漂ってくる。

コメントを残す

Merry Christmas !

005

雪が降った日に作ったリースは、やはりスイスの森の色になった。

今年も、ちょっと早めに東京のクリスマス・ディナー。
このオフィスをデザインしてくださった建築家氏やご紹介くださったアーキテクトの方々をご招待。

空間は、四季をひと回りして使ってみなければわからない。いろいろ我儘を言ってお世話になった皆さまに、ここで寛いでいただきたいと思いながら、なかなかタイミングがつかめず約束を果たせていなかった。

スイスでは、クリスマスにフォンデュ・シノワーズというしゃぶしゃぶのような料理をいただくことが定番だが、最近は、オリジナルにヌーベル・スイス風のコースを組む方が流行っぽいかもしれない。

あれこれ迷ったが、どこかにチーズを、と。前菜とメインの間に小さなフォンデュを入れてみた。

003

モン・ドール、黄金の山。スイスのヴァシュラン モン・ドールの入荷まではもう少し待たなければいけなかったので、お店の方がフランスのモン・ドール アルノーを勧めてくださった。

ちょうどこの日にほどよく熟成していて、火を入れるのはもったいないのかもしれないが、ガーリックを差し込んでたっぷり目の白ワインを注ぎ、オーブンで焼く。

とろとろのチーズが、皮つきのじゃがいもやバゲットの、ぱりっとした感じと絡んで、とってもおいしい。

今年一番というほど、冷え込んだ夜。
ゆったりと、なごやかな時間が流れていった。

 

素敵なイヴを。

メリー・クリスマス。

コメントを残す

簡単ランチ

003

スイスから戻ってくる前日に、あれこれチーズを買い集めた。何しろバゲージをしまっておく飛行機の室内はC10度以下、と聞く。以前は、日本から干物を大量に持ち帰ったものだが、今回は、ありがたそうに鰻を運び、チーズを持ってくるという具合だ。

日本のチーズ専門店の方が聞かれたら何と言われるのか。私は日本に持ってきたチーズは、すぐ食べる分以外は即座に冷凍する。これは、スイスのチーズ屋さんからも聞いた方法なので、もし海外から食べきれないほどのチーズをいただいたりした場合はお勧め。持ち帰る場合は、小分けにしてバキュームパックしてもらうと、日本での使い勝手がいい。

004

久々に友達に声をかけ、簡単ランチにご招待。
ディナーの用意は、まだ時差ボケしていた私には辛いが、ランチは気が楽。この夏の間中、すっかりはまったリゾットをメインに、デザートは、シナモンの利いたバーゼルの名物クッキーとイタリアのアマレッティ。

近所のスーパーで大きないちじくを見かけ、前菜は、いちじくのサラダと決めた。
元のレシピではギリシャのチーズを使うが、今回は、スイス産のパルミジャーノ・レッジャーノ。何かベリーが欲しいところだが、これは葡萄に変わり、ミックスペッパーとバルサミコでアクセントをつけて、なかなか秋らしいサラダになった。いちじくも葡萄も、皮ごといただく。

ワインは、ソーヴィニオン・ブラン。
昼間にちょっとお酒が入る、ふわっとした感覚がいい。批評精神にあふれた女性たちが集まると、ふわふわしたまま、話題は世界の西へ東へ。止めどなくかしましくなっていく。

 

コメントを残す

ティチーノのアンズ茸

006

雨の多い夏。しかも、涼しい。湖で思う存分太陽を浴びたり泳いだりできた日は、ほんとうに数えるほどしかなかった。この季節だけ出ている湖畔のピザ屋さんは、上がったり。

ティチーノでバカンスを過ごしたご近所のご夫婦から、アンズ茸をたくさんいただいた。思わずくんくん匂いを嗅いで、南スイスの空気を吸い込んだ。

イタリアとの国境あたりで採れたアンズ茸は、チューリッヒのお店で売っているものよりも色がつややかで、大ぶりで、何といっても歯ごたえがあっておいしい。

013

これは、今夜いただかなくてはと、急遽ディナーのメニューを変更し、グランマキッチンの登場。オニオンとワイン、クリームがあれば簡単にできるキノコのパスタ。ポイントは白ワインにリースリングを使ったこと。

001それでも、まだ半分あったので、翌日のランチにはスープ仕立てにした。こちらも、リースリングを使った。

初秋の森から届いた贈り物。たっぷりとスプーンですくう。

コメントを残す

Meat or Fish という名前のワイン

chicken_2400 Meat or Fish Wine

fish_2400 Meat or Fish Wine 2

山に囲まれた国のこと。かつては、海の魚を食したことがないというご年配の方が結構いらした。海のある国に旅行する機会などあまりなかった世代にとっては、そういうものだろう。

スイスに海はないけれど、水は豊かだ。種類は多くないものの、地元の魚料理もある。
例えば、ライン川の畔では、大きな脂ののった鱒の料理が知られる。湖からは淡水の魚が獲れ、うちの近くにはそれを扱う専門の小さな魚屋さんがある。ご主人は、夕方になると手漕ぎの船を出して漁をする。
エグリフィレEglifilet と呼ばれる湖の魚は、フリッターやムニエルにするととてもおいしい。

ここ5年ほどの間に魚の流通がかなり進化し、デパ地下の魚介の鮮度が上がってきたし、ワンランクアップのスーパーならばいい魚が手に入るようになってきた。

いつ行っても面白いのは、郊外に出店しているポルトガル系の魚屋さん。南欧の魚がずらっと揃い、今の時期ならまだフランスから運ばれた殻つきのオイスターが何種類も並んでいる。アジだのサバだのは開いてもらい、軽く塩をしてバルコニーに置いておけば、ここでは手に入らない干物を簡単に作ることができる。

1月中旬にリリースして間もなく、ヨーロッパのクリエイターの間でセンセーションを呼んでいるワインの広告。

熱帯のジャングルには、鳥の化身かと見紛う花が咲いている。空を飛ぶ魚も確かに存在する。魚と鳥が交配したら、こういうことになるのだろうか。

肉料理にも、魚料理にも。Meat or Fish という名前のワイン。
いさぎよいコミュニケーションが成功している。

食の冒険の最先端、スペイン、バルセロナから。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Client: Meat or Fish
Advertising Agency: Grey, Barcelona, Spain
Creative Directors: Angel Trallero, José Miguel Tortajada, Joan Mas
Art Director: Dani Páez
Illustrator: Lucas Pigliacampo

 

コメントを残す