Merry Christmas !

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雪が降った日に作ったリースは、やはりスイスの森の色になった。

今年も、ちょっと早めに東京のクリスマス・ディナー。
このオフィスをデザインしてくださった建築家氏やご紹介くださったアーキテクトの方々をご招待。

空間は、四季をひと回りして使ってみなければわからない。いろいろ我儘を言ってお世話になった皆さまに、ここで寛いでいただきたいと思いながら、なかなかタイミングがつかめず約束を果たせていなかった。

スイスでは、クリスマスにフォンデュ・シノワーズというしゃぶしゃぶのような料理をいただくことが定番だが、最近は、オリジナルにヌーベル・スイス風のコースを組む方が流行っぽいかもしれない。

あれこれ迷ったが、どこかにチーズを、と。前菜とメインの間に小さなフォンデュを入れてみた。

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モン・ドール、黄金の山。スイスのヴァシュラン モン・ドールの入荷まではもう少し待たなければいけなかったので、お店の方がフランスのモン・ドール アルノーを勧めてくださった。

ちょうどこの日にほどよく熟成していて、火を入れるのはもったいないのかもしれないが、ガーリックを差し込んでたっぷり目の白ワインを注ぎ、オーブンで焼く。

とろとろのチーズが、皮つきのじゃがいもやバゲットの、ぱりっとした感じと絡んで、とってもおいしい。

今年一番というほど、冷え込んだ夜。
ゆったりと、なごやかな時間が流れていった。

 

素敵なイヴを。

メリー・クリスマス。

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ワークライフバランスを目指して、 子育て中の母親のためのコーチングを開発

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コーチ、という職業は、日本でどのぐらい認知されているだろうか。
羽生選手のコーチが何をする人かイメージできても、ビジネスの世界のコーチやメンターとなると、経営コンサルタントの仕事の一部のように捉えられているかもしれない。
最近舞い込んできたメールのなかに、アロマセラピーと並んで、「コーチングもいたします」というお誘いがあったが、こうなると自己啓発系の心理カウンセラーなどともごっちゃになって歪曲されているような気もしてくる。

電力機器、重工業の世界的リーディングカンパニーABBで長年ビジネスコンサルタントとして活躍してきたシモン・ペスタロッチさん。彼女は二人目のお子さんを出産後、自身の経験を生かして子育て中の母親をターゲットに「ママ・コーチング」というプログラムを開発し、ここ数年、その成果が話題を呼び、スイスで注目されている。

コンサルティングが、企業のなかで効率化を図り結果を出す経済活動であることに対して、人材開発に取り入れるコーチングは、ゴールに向けて最短の時間で成果があがるように、1対1の双方向のコミュニケーションを積み上げながら進んでいく。それは、クライアントのよりプライベートな領域に関わることになる。
コーチは、対等な立場からクライアントが質問に対して答えを見つけ自分で整理できるように導き、行動を継続して、一緒に目標達成へ向かっていく。

一人目のお子さんを出産した当時、グローバルマネージャーとして頻繁に海外出張をこなしていた彼女は、それでも、家事育児をこなし、パーティには夫婦そろって出席するなど、ソーシャルライフも出産前と変わらずに楽しんでいた。

ちょうど会社の同僚や友人たちが初めての子どもを持った時期でもあり、どうしたらそんなに何もかもできるのか、そのコツを教えて欲しいと頼まれたことが「ママ・コーチング」を開発するきっかけだった。

ただし、スイスには、日本のワーキングウーマンと大きく違う働き方がある。週のうち、何日、何時間働くか、選ぶことができる。「100%働いているの?」「いいえ、今は60%よ」という会話をよく聞く。

「ママ・コーチング」の基本は、ビジネスの世界のコーチングと同様、タイム・マネージメントにある。それを母親のワークライフバランスを目指すベースとして応用した。

一日にしなければいけないことをシンプルにオーガナイズし、効率よくこなせるようになれば、自分のために使えるスペアタイムが生まれる。そんな余裕が出てきたら、自分の外観を見直す。ヘアスタイルも、爪の手入れも、もちろんファッションも。
この段階で、どのクライアントにも、セクシーな下着を買うことを勧める。ランジェリーは、見せたい自分を意識するきっかけになる。

体型も、出産前に戻す。ジムへ行く時間がないなら、家でできるワークアウトのリンクを送る。心のバッテリーチャージのために、子どもを寝かしつけている間に、自分を高めることをする。例えば、もう一度本を読む習慣をつける、音楽を聞く・・・

自分の見え方にも、気持の持ちようにも少し自信を取り戻したら、次のステップとして夫との関係を見直す。
二人だけで過ごす時間を、最低週に2時間は作る。

「夢、恐れていること、心配事、何を相手にして欲しいのか・・・・たわいのないことでもいいのです。もう一度二人だけで過ごす時間が必要なのです」

スイスの離婚率がほぼ50%に達するという現状。学校で問題を持つ子どもの多くは、家庭環境にしばしば原因があること。カップルの数ほどバリエーションはあるものの、パートナーとの関係がうまくいっていなければ、子どもを健全に育てるのは難しい、その危機感を認識するべきだと説く。

母親自身がよりバランスの取れた女性へと成長していく。結局は、夫との関係をより良いものへと変えていくイニシアティブを持ち、家族のあり方を方向付けリードしていくのは女性なのだというのが、シモンさんの考え方の基盤にある。それによって、母親はキャリアを含めバランスのとれた生き方を楽しめるようになる。コーチングのゴールは、そこにある。

「ママ・コーチング」は、5つのテーマから構成され、1テーマは、90分×5回でゴールを目指す。
クライアントの理解度、達成度、心の動きによって、必要であれば休みを入れながら進めていくため、全テーマを終了するまで、最短でも半年かかる。直接会う時間が取れない女性のためには、スカイプでのセッションを積極的に取り入れ、クライアントは、近隣諸国ドイツ語圏にも広がっている。

写真、ピルミン・ロスリーPirmin Rösli 。「プレシャス」11月号、巻頭グラビア、世界4都市のワーキング・ウーマンが登場するLife is so precious ! に掲載。

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https://precious.jp/category/precious-magazine

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簡単ランチ

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スイスから戻ってくる前日に、あれこれチーズを買い集めた。何しろバゲージをしまっておく飛行機の室内はC10度以下、と聞く。以前は、日本から干物を大量に持ち帰ったものだが、今回は、ありがたそうに鰻を運び、チーズを持ってくるという具合だ。

日本のチーズ専門店の方が聞かれたら何と言われるのか。私は日本に持ってきたチーズは、すぐ食べる分以外は即座に冷凍する。これは、スイスのチーズ屋さんからも聞いた方法なので、もし海外から食べきれないほどのチーズをいただいたりした場合はお勧め。持ち帰る場合は、小分けにしてバキュームパックしてもらうと、日本での使い勝手がいい。

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久々に友達に声をかけ、簡単ランチにご招待。
ディナーの用意は、まだ時差ボケしていた私には辛いが、ランチは気が楽。この夏の間中、すっかりはまったリゾットをメインに、デザートは、シナモンの利いたバーゼルの名物クッキーとイタリアのアマレッティ。

近所のスーパーで大きないちじくを見かけ、前菜は、いちじくのサラダと決めた。
元のレシピではギリシャのチーズを使うが、今回は、スイス産のパルミジャーノ・レッジャーノ。何かベリーが欲しいところだが、これは葡萄に変わり、ミックスペッパーとバルサミコでアクセントをつけて、なかなか秋らしいサラダになった。いちじくも葡萄も、皮ごといただく。

ワインは、ソーヴィニオン・ブラン。
昼間にちょっとお酒が入る、ふわっとした感覚がいい。批評精神にあふれた女性たちが集まると、ふわふわしたまま、話題は世界の西へ東へ。止めどなくかしましくなっていく。

 

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ティチーノのアンズ茸

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雨の多い夏。しかも、涼しい。湖で思う存分太陽を浴びたり泳いだりできた日は、ほんとうに数えるほどしかなかった。この季節だけ出ている湖畔のピザ屋さんは、上がったり。

ティチーノでバカンスを過ごしたご近所のご夫婦から、アンズ茸をたくさんいただいた。思わずくんくん匂いを嗅いで、南スイスの空気を吸い込んだ。

イタリアとの国境あたりで採れたアンズ茸は、チューリッヒのお店で売っているものよりも色がつややかで、大ぶりで、何といっても歯ごたえがあっておいしい。

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これは、今夜いただかなくてはと、急遽ディナーのメニューを変更し、グランマキッチンの登場。オニオンとワイン、クリームがあれば簡単にできるキノコのパスタ。ポイントは白ワインにリースリングを使ったこと。

001それでも、まだ半分あったので、翌日のランチにはスープ仕立てにした。こちらも、リースリングを使った。

初秋の森から届いた贈り物。たっぷりとスプーンですくう。

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文化活動を生涯の仕事にする。 ミグロ カルチャーパーセンテージ

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スイスの街を歩いていると、いたるところでオレンジ色のMのマークのスーパーに出会う。M、MM、MMMと店の規模によってMの数が違うが、これらはスイス全土を網羅する生協、ミグロだ。

1925年。ミグロの創業者ゴットリーブ・ドットワイラーは、T型フォードを改造した移動販売車にコーヒー、砂糖、パスタなど生活必需品を積んで、路上販売を始めた。ドットワイラーは、旧来の商習慣に堂々と対抗し、生産者と消費者を直接結びつけて価格を大幅に引き下げるという、全く新しいビジネスで庶民の生活に奉仕する姿勢を明確にした。

当時としては、非常に斬新な社会企業的な経営哲学を持ち、消費者との協同、利益還元を目指し、やがて協同組合方式をとることとなる。

現在、ミグログループは、スイス全土に国内最大規模でスーパーを展開。デパート、金融・保険、旅行、語学や成人教育など多岐に渡る異業種を持つコングロマリットに発展し、スイスにおける暮らしのあらゆるシーンに関わっている。

Giving something back to society.
1957年。ドットワイラーは、スイスにおける文化活動を推進していく、「ミグロ カルチャー パーセンテージ」を設立した。

企業の利潤や経済的力以上に、文化的、社会的貢献を継続することによって、企業もまた持続可能である、という思想は、創業時から現在まで貫かれている。

収益ではなく、売り上げの一定割合で運営されるこの団体は、早くから前衛芸術の作家を支援してきた布石を現代アートの美術館へと発展させ、いち早くモダンダンスを紹介してきた実績が、今日では名高いモダン・ダンスフェスティバルに成長するなど、まだ光の当たっていない美しさ、可能性を卓越した先見性で見出し、育て、新しい時代にその存在価値を高めてきた。

例えば、戦後間もなく企画された「クラブハウス・コンサート」。まだまだ貧しかった時代に、クラシックを聴きに出かけるなど、庶民には叶わなかったわけだが、上流階級や一部の愛好家のものだったクラシック音楽を万人へと、誰もが楽しめる場と機会を創出した。
ヨーロッパ諸国から、ニューヨークから、第一線の音楽家たちを招いてコンサートを開催し、演奏会へ行くための洋服がなくても、手頃な値段のチケットを買えば聴きに行くことができるようになった。

社会的に意義があり、役に立つ活動をする。それを継続的に発展させるためには、スイス人が潜在的に何を求めているのか、常にそれを見つけ出さなければならない。

60年を超える伝統あるこのコンサートは老齢化していたが、近年若い人々へ、より幅広い人々へとマーケットデザインし再ロンチした、「「ミグロ カルチャーパーセンテージ クラシック」として生まれ変わり人気を高めている。

「ミグロ カルチャーパーセンテージ」の仕事は実に多岐であり、多面的であるが、文化的活動を担う分野は、音楽、パフォーミングアート、美術館、ソーシャルプロジェクト、ポップ&ニューメディアなど私たちの周辺にあるすべての「文化」が対象となり得る。

その活動として特筆すべきことのひとつに、コンペティションと才能の育成がある。公募のコンペで発掘された有望な音楽家、俳優、歌手、美術家など、若い芸術家たちを、「ミグロ カルチャーパーセンテージ」が支援し育てていく活動だ。彼らが生活していけるようになるまで、世に名前が出るまでの間サポートするというミッションは、一人ひとりのアーティストに対して大きな責任を負うことになる。

国際的にも極めて高く評価されるミグロ生活協同組合連合会。その文化・社会局局長のへディ・グレーバーさんに、インタビューする機会を得た。バーゼルの教育委員会から現職へ移り、10年。スイスの文化事業を牽引する敏腕のリーダーは、さばさばと明るく、よく笑う方だ。

写真、ピルミン・ロスリーPirmin Rösli 。現在発売中の「プレシャス」8月号、巻頭グラビア、世界4都市のワーキング・ウーマンが登場するLife is so precious ! に掲載されている。

お手に取っていただければ幸いです。

https://engagement.migros.ch/de/engagement

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https://precious.jp/category/precious-magazine

 

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