伝説の天才「バスキア展」 バイエラー財団美術館

Jean-Michel Basquiat in his studio at the Great Jones Street, New York, 1985
In front of Untitled, 1985, Acrylic and oilstick on wood, 217 x 275,5 x 30,5 cm (detail)
Private Collection, Photo: Lizzie Himmel©  © 2010, ProLitteris, Zürich

ジャン-ミッシェル・バスキアがもし生きていたら、彼は今50歳だ。

バスキアは、カリブからの移民の家庭に生まれ、ニューヨークのアンダーグラウンドから、突然熱風が噴き出すかのように現れた。

82年、ドイツのカッセルKasselで開かれた現代アート展「ドクメンタ Documenta」に招待され、一躍注目をあびる。それがどのくらいすごいことかと言うと、例えば、21歳の無名のアーティストが、ビエンナーレに招待されたと考えるとわかりやすい。

これを機に、ニューヨークのトップギャラリーにその名が知られるやいなや、猛スピードで、世界のアーティストの頂点へと登っていく。

バスキア、22歳の時。バイエラー財団の創設者エルンスト・バイエラーErnst Beyeler は、彼を招き、「エクスプレッシヴ ペインティング アフター ピカソ展 Expressive Painting after Picasso」を開催。
バスキアは、ヨーロッパが気に入り、これ以降、イタリア、フランスへよく旅行したが、特にスイスにはしばしば滞在し、多くの作品を制作した。

バスキアの作品を収集していたチューリッヒの有名ギャラリスト、ブルーノ・ビショフベルガーBruno Bishofbergerは、83年に、アンディー・ウォーホルAndy Warhol に、その後、フランチェスコ・クレメンティFrancesco Clementeに引きあわせ、コラボレーションを提案した。共同制作は、バスキアの後半の作品で重要なパートを占めることとなる。

ともに活動したFab 5 zfreddy, ヴィンセント・ギャロVincent Gallo, キース・へリングKeith Haring, デビー・ハリーDebbie Harry, マドンナMadonna ・・・
そんな時代を象徴する飛び抜けた才能に囲まれていたことも、彼のカリスマ性をますます高めていった。

白人社会の階級もアカデミックなルールもまったく無視して、日々の出来事から迸るインスピレーションを、いつ眠っていたのかと思うほどの激しいパワーでぶつけて、次々と作品を生み出す。

ウォーホルの死の翌年、バスキアは、ドラッグのオーバーダズで唐突にこの世を去った。わずか27歳。

画家として、俳優、詩人、ミュージシャン、グラフィティ アーティストとして。活躍したのは、70年代後半から88年まで。10年ほどだ。

ニューヨークのホイットニー美術館The Whitney Museum of American Art、ニューヨーク近代美術館The Museum of Modern Art(MoMA)、パリのジョルジュ・ポンピドゥー国立美術文化センターCentre National d’Art et de Culture Georges Pompidou 、パリ市立近代美術館Musée d’Art Moderne de la Ville de Parisとダイナミックなプロジェクトを組み、さらにブルーノ・ビショフベルガーを始めとしたギャラリーやコレクターのプライベートコレクションを展覧。

150点を超える絵画、ドローウィング、オブジェ、フィルムなどで構成された、ヨーロッパ初の大規模なバスキア展 BASQIATが、バーゼルのバイエラー財団美術館で開催されている。

レンゾ・ピアノRenzo Pianoのガラスの天井が夏の日差しを受け止め、柔らかく濾過したかのように会場に降り注ぐ。雲が動くと光が変わり、巨大な作品から放出されるビートや熱も変化する。

カタログに寄せた、館長サム・ケラーSam Keller とキュレーターのディーター・ブックハートDieter Buchhartによるイントロダクションが、なかなか秀逸で感動的だ。この作品集もまた、展覧会同様、バスキアへの深い敬意にあふれている。

9月5日まで

 

 

 

 

 

 

 

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アート41バーゼル  世界最大のフェアと美術館がネットする、アートの街

錆びた鉄色の巨大な箱が見える。ヘルツォーク&ド・ムーロンHerzog & de Meuron設計の「信号取扱所」だ。列車はバーゼル駅に滑り込む。
スイス、ドイツ、フランスに接する、ヨーロッパ最大の国境駅。ここに降りると、いつもちょっとした異国情緒を感じる。
ネオバロックのファサードを抜け、トラムに乗って中世の街並みを走り、視界が開けて間もなく、メッセ会場に到着する。

41回目を迎えた、世界最高峰のアートの見本市、アート・バーゼル。毎年、ヨーロッパがホリデーシーズンに入る前、今年は、6月16日から20日までの5日間開催された。15日のプレヴューは、例年通り、各国の名立たる美術館の代表がずらりと揃い、ギャラリスト、キュレーター、評論家、VIPなど、招待客とマスコミ関係者で華々しくオープンした。

アート・バーゼルに参加することは、世界中から選ばれたトップ・ギャラリーという名誉を授かることに等しい。南北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカなどの約1100の応募ギャラリーから37カ国、300を超えるリーディング・ギャラリーが厳選された。モダン・アートからカッティングエッジの現代アートまで、2500名を超えるアーティストの作品が一堂に会する。

日本からの常連、小山登美夫ギャラリーの奈良美智の陶製作品。ギャラリー小柳の杉本博司、マルレーネ・デュマスMarlene Dumas、SCAI THE BATHHOUSE から、名和晃平、チョン・ジュンホ Jeon Joonho。そして、シュウゴアーツの金氏徹平やタカ・イシイギャラリーの木村友紀、マリオ・ガルシア・トレスMario Garcia Torres など。いずれの画廊も、いいコレクターやファンを、年々世界に拡大している。

ちょうど、南アのワールドカップで熱戦が繰り広げられていた日々。メイン会場の隣、メディア・センターが設けられたビルのカフェでは、休憩中のギャラリストもゲストも一緒になって歓声を上げていた。

昨年は、アート・バーゼルらしいアイロニーで会場正面に真っ黒な十字架が展示され、どのギャラリーにも、ピーンと糸を張ったような緊張が走っていたが、今年のリラックスした空気は、作品を見てゆく楽しさが取り戻されているようだった。

経済危機を乗り越え、アートと対峙する本質へ帰ろうという前回からの流れはより安定し、それは、売り上げの堅調さに良く現れている。

アート・バーゼル事務局が、作品の質の高さ、予想を超えた結果と発表するなかで、とりわけ誇らしい成功として強調していたのが、地球上から集まった来場者62,500人という過去最高記録であり、その人々の関心の持ち様と知識レベルの水準だった。

71年にアート・バーゼルを友人と設立した、バイエラー財団美術館Fondation Beyeler の創設者、エルンスト・バイエラーErnst Beyeler が、この2月に亡くなった。
アート・バーゼル開催期間中、特設会場では、アンリ・マティスHenri Matisseの「アカンタスACANTUS」を核にしたデモンストレーションを展開。毎年、エントランスすぐそばのトップにブースを持つホール2の会場では、バイエラー氏の写真が穏やかに微笑む。最も好きなアーティストの一人であったマティスが、ポリネシアの空から運んできた鳥たちが羽ばたいていた。

アート・バーゼルは、時代を代表するアートが展示される場であるという役割がある。それに対して、今回のフェアは、19世紀、20世紀の作品が数多く並んだことから、新しくない、という批判がかなり目につく。ミロ、ピカソ、カンディンスキー、ジャコメッティといったモダンアートとコンセプチュアル・アートとくくられる作品の点数が確かに増えていたが、それらに対して、安心して投資できる価値の分かりやすい作品が多すぎるというものだった。

数週間前に見かけた記事だが、日本のある美術館の展覧会に対して「まるで教科書に出てくるような・・・」という形容があった。てっきり批判なのかと思って読み進んでみたら、まったく逆で、これは、素晴らしい名画が信じがたいほど並んでいるという賛辞だったことがわかり、なるほどと目から鱗のようだった。

そういう表現でいうと、アート・バーゼルは、世界の美術全集や分厚い美術館の作品集をめくっているかのように、歴史に名を成す巨匠の作品や夭折した天才、飛ぶ鳥落とす 勢いの現代作家のアートが、とんでもないボリュームで、次から次と目の前に現れる。

開催当初は、美術が、あたかも家電や家具のように売られている、という大きな議論が起きたそうだが、その是非や意味は、この40年の間に大きく変化した。
しかし、そうは言うものの、実際、ギャラリーの奥まった応接室でなく、物々しいオークションでもなく、それらが、見本市の会場のブースで明らかに流通していることを目の当たりにすると、初めて訪れた人はかなり驚かされるだろう。

ロンドンのティモシー・テイラー・ギャラリー Timothy Taylor Galleryを始め各所から、「非常に健全なマーケット」というワードが聞こえた。

何年間か続きブームであったが、ファイナンシャル・コンサルタントの助言で、自分の理解を超えた巨大な「現代アート」に投機しようという傾向は、下火になったと言われる。美術館へ移ることはともかくとして、感動し、手元に置きたいと思う作品を、自分の鑑識眼で判断する芸術ファンやトップ・コレクターがここに集まる。アート・バーゼルが世界に及ぼす役割と蓄積の重要さもまた、真摯に自負されている。

チューリッヒ、ロンドン、ニューヨークにギャラリーを持つ、ハウザー&ヴィルス Hauser&Wirthのイワン・ヴィルスIwan Wirthは、インタビューでこう語る。「コレクター達が、こんな風に興味を持つものかと、とても印象的でした。つまり、すでにその価値が確立された作品だけではなく、若いアーティストたちの質の高い作品を、きちんと評価するということです。コレクター達が確信を持って決断しているように、アート市場は、強い求心力を取り戻しています」。

若いカップルが、クリスト Christo の作品の前で、ギャラリストと話をしている。やがて、奥から2点、3点と持ち出され、通りかかった偶然でシリーズを見せていただいた。

プレビューでめぼしい作品はすでに買い手がつくと言われるが、ウィークデーの会場では、かなり作品の入れ替えがなされるほど、「お買い物」をする人々がいる。
ヴ―ヴ・クリコのボトルを氷のワゴンに冷やし、黒服のギャルソンが通路を周る。

これらの作品は、ホール2の300のギャラリーにあるが、中庭を挟んで隣接する、ホール1のアート・アンリミテッド Art Unlimitedでは、文字通り大きさの限界を超えた大がかりなインスタレーションや立体、ビデオが展示され、それらを次々と体験しながら巡る。空間がすとーんと抜けているだけに、アートのプールで遊ぶように、参加することでアートの一部になるような実験が楽しい。

ちょっと車で持って帰るというわけにはいかない大きさだが、お求めになる方は、どこかで相談しているのだろう。

Michael Beutler, Galerie Christian Nagel | Köln; Galerie Bärbel Grässlin | Frankfurt am Main; Pierre Bismuth, Team Gallery | New York Photo:Art Basel

アート・バーゼル開催の時期に合わせ、バーゼルの美術館では、大きな展覧会が開かれている。

シャウラガー美術館Schaulager Museumでは、歌手のビョークのパートナー、波に乗っているマシュー・バーニーMattew BarnyのPrayer Sheet with the Wound and the Nail展、「拘束のドロ-ウィングDRAWING RESTRAINT」。
バーゼル美術館 Kunstmuseum Baselでは、ローズマリー・トロッケルRosemarie Trockelのドローイング展。
バイエラー財団美術館では、ジャン・ミッシェル・バスキアJean-Michel Basqiat展とフェリックス・ゴンザレス = トレスFelix Gonzalez-Torres展を同時開催。どちらも若くして世を去った。

さらに、バーゼル現代アート美術館The Museum für Gegenwartskunstのロドニー・グラハムRodney Graham展、ティングリー美術館 Tinguely Mueseumのロボット・ドリーム Robot Dreams展など。

美術館の建築といい、企画の切り方といい、バーゼルの数ある美術館を俯瞰すると、さすがはチューリッヒを超える芸術の街と、お互いに刺激し合う関係を納得する。

中世の旧市街とカルチャーミックされる、尖った街の面白さ。世界の女王といわれるアート・バーゼルは、このエリアに先端の現代アートを枝葉のように張り巡らし、連動する仕掛けをつくっている。

Galleries: FOUNDATION BEYELER | Basel (2)/ Helly Nahmad Gallery |New York/ Galerie Gmurzynska|Zug/ Tony Shafrazi Gallery | New York/Sikkema Jenkins & Co.|New York/Sperone Westwater|New York(2)/Marlborough Galerie GmbH|Zurich/Sies + Höke| Düsseldorf/Galerie Peter Kilchmann|Zurich (2)/Richard Gray Gallery|Chicago/Galerie Bob van Orsouw|Zurich/David Zwirner|New York/Galleria Continua|San Gimignano Italy/Galerie Max Hetzler|Berlin/Galerie Hans Mayer| Düsseldorf/Kukje Gallery|Seoul/Gió Marconi Gallery|Milano/Waddington Galleries|London/Galerie Hans Mayer | Düsseldorf

Photo:©Mieko Yagi

https://www.artbasel.com/

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ミグロ美術館現代アート 反射するユートピア While bodies get mirrored- An Exhibition about Movement, Formalism and Space

1916年。トリスタン・ツァラは、チューリッヒでダダイズムを宣言した。美術史上、その後いくつかの大きな影響を受けてきているが、現在、この街は、世界の現代アートの重要な拠点のひとつとして確立されている。

その中でも、リーダーの役割を担っているのが、ミグロ美術館現代アートMigros Museum für Gegenwartskunst。

実際、現代アートだけを専門に扱う美術館は、ヨーロッパでも意外に少ないが、ミグロ美術館現代アートは、例えばパリのパレ・ド・トーキョーやロンドンのホワイトチャペル・アート・ギャラリーと並ぶ世界のアートシーンで常にユニークで質の高い企画展を発表する存在として知られている。

オープンは、1996年。ちょうど、この90年代半ばから現在に至るまで、世界中からアーティストがこの街に集まって来るという傾向が見られる。

ミグロ美術館現代アートは、ライオンのブランドマークでおなじみのスイスの古いビール工場をそっくり改造した建物のなかにある。また、このビルには、クンストハレ現代美術館 Kunsthalle Zürich を始め、 エヴァ・プレゼンフーバー Eva Presenhuber, ハウザー&ヴィルスHauser & Wirth, ピーター・キルシュマンPeter Kilchmann, ボブ・ヴァン・オルソー Bob van Orsouw といった、世界の名立たる現代アートのギャラリーが共存している。ミグロ美術館現代アートは、時として、これらのギャラリーと連動した活動を展開することもある。

ローヴェンブロイ・エリアと呼ばれるLöwenbrau-Areaこの周辺一帯には、ギャラリーが多く、またクリエイティブな仕事が集中している、チューリッヒでも最先端の情報を発信するエリアである。ミグロ美術館現代アートは、この地域においては、美術を学ぶ学生が卒業後もチューリッヒで制作活動を続けられるよう環境整備をしていると同時に、世界のアーティストと密接な関係を結びながら、よりスケールの大きな作品に取り組み、人々と交感していくプロセスを通じて、現代アートの歴史を作り続けることを目的としている。

パトロネージュするのは、スイス最大のリテイラー、ミグロ。スーパー、デパート、銀行、学校など、傘下には異業種が多様にある。創業者ゴットリープ・ドゥットワイラーGottlieb Duttweilerの波乱に満ちた、実にチャレンジングな生涯は有名であるが、彼自身がアバンギャルドな絵画を収集していたことは、系譜として記憶しておきたい。

ミグロ美術館現代アートでは、現在、20世紀思想を総ざらいして再構築したかのような実にパワフルな展覧会が開催されている。

世界的な現代作家13人が、ダンス、彫刻、ビデオ、インスタレーションなど、象徴言語の脈絡の中で、まったく異なる展開と多様なコンテンツの働きを煌めかせたグループ展 While bodies get mirrored- An Exhibition about Movement, Formalism and Space。

動きと空間の間に生じる緊張関係を大きなテーマとし、現代アートにおけるポスト・モダン・ダンスやその振り付けの影響に焦点を当てている。

また、もうひとつの中心テーマは、「演じること」の再プレゼンテーション。動きの記号、ダンサーの表現を様々な媒体を通じて展覧している。

初期のポスト・モダン・ダンスは、次のモダニズムへとブリッジする時期に「あらゆる動きはダンスであり、全ての人間はダンサーである」と解釈していた。

ポスト・モダン・ダンスにおける動きの形式表現の遺産は、現代アートに応用され、反映し、さらに発展している。とりわけ、ここ数年、若いアーティストの間で、この20世紀初めのアバンギャルドなムーブメントが再度取り上げられ、再発見され、興味が高まっているという大変面白い動きが起きている。

キュレーターのラファエル・ギガックスRaphael Gygaxのインタビューを聞いた。

「タイトルWhile bodies get mirroredは、一見、複雑な様相を示しているかもしれません。しかし、これは、なによりも大変詩的で、私たちが追求してみたかった3つの瞬間を映し出しているのです。フォーマリズム、ムーブメント、そして空間。作品は、それを映し出す、あるいは反射させる空間が必要とされます。ポスト・モダンアートにおいて、反射させることは、しばしば身体の細分化と密接な関係を持っています」。

館長ハイケ・ムンダー Heike Munderは、2001年に就任して以来、次々と斬新で挑戦的な企画を成功させてきた。

「パフォーマティブな活動を、長年に渡って提示してきました。ムーブメント、劇場的な表現形式。私たちは、今回グループ展として、それらすべてをこの空間に集合させました」。

会場一番奥、真っ赤な絨毯の上に70枚を超える鏡を杭のように構築した、ウィリアム・フォーサイスWilliam ForsytheのThe Defenders Part2が展示されている。この作品と絡む文脈が、展覧全体の作品から作品へと、まったく異質でありながらもget Mirroedというというコンセプトで符合している。

Martin Soto Climent The Swan Swoons in the Still of the Swirl 2010 Single-channel-videoprojection (color, sound), blinds, aluminum Dimensions variable/ Photo A.Burger,Zurich

会場に入って、まず私たちを出迎えるのは、このフォーサイスのDNAを汲み、その暗示とも受け取れるメキシコのマルティン・ソート・クリメントMrtin Soto Climentの、白鳥 The Swan Swoons in the Still of Swirl。スチールの彫刻と、それを踊らせる作家がスクリーンに流れる。

この導線を辿っていくと、アニミズムを連想させるアメリカのアバンギャルドのパイオニア、May Derenのダンス。

Maya Deren A Study in Choreography for Camera 1945 Single-channel video projection (16mm film transferred to DVD, b/w, no sound) 3 min. Loop

Maya Deren A Study in Choreography for Camera 1945 Single-channel video projection (16mm film transferred to DVD, b/w, no sound) 3 min. Loop

 

その先には、ヘンリー・ミラーの作品のパッサージュをベースに、彼の親密な女性のイメージを引用した、デリア・ゴンツァレツDelia Gonzalezのフィルム。シェークスピアの「真夏の夜の夢」に登場する妖精の王オベロンの黒い翼を身につけて、闇の奥から現れたようなダンサーが、ある種呪術的にさえ見える舞踏を踊る。

Delia Gonzalez In Remembrance… 2010 Single-channel video projection (16mm film transferred to DVD, color, sound) 12:50 min.

ハイケ・ムンダーの話を続けよう。

「現代の精神性は、リ・フォーマリズムとファンタジーの間で生きています。2つの重要なムーブメントは、形式が幾何学に対抗するものでありながら、しかし、同時に常にオーバーラップしているということなのです。ユートピアは、失われました。しかし、多くのアーティストが、ユートピアと交流しています。彼らは、非常に強い芸術の力でそれを取り戻しているのです」。

パウラ・オロヴスカPaulina OlowskaによるAlphabet Letters。

Paulina Olowska Pioneer Alphabet Letters 2005 Box with 26 cards, colored, 4 cards, b/w je 21 x 15 cm/ Photo A.Burger,Zurich

彫刻的なフィールドを拡大拡張しつつも、さらにムーブメントを凝固させようとロープを張り巡らす、ジュリアン・ゲーテJulian Goethe。

Julian Goethe: Kontakt, 2005, MDF wood, lightnings, Ca. 250 x 400 x 20 cm, © the artist, Photo A. Burger,Zurich

Julian Goethe: Kontakt, 2005, MDF wood, lightnings, Ca. 250 x 400 x 20 cm,


Julian Goethe Extended Version 2010 Rope, metal Grösse variabel/ Photo A.Burger,Zurich

Julian Goethe Extended Version 2010 Rope, metal Grösse variabel/ Photo A.Burger,Zurich

社会的、政治的アプローチをも意図する、アンナ・モルスカAnna Molska。

Anna Molska: Tanagram, 2006 – 2007, Single-channel video (b/w, sound), 5:10 min, © the artist

Anna Molska: Tanagram, 2006 – 2007, Single-channel video (b/w, sound), 5:10 min, © the artist

「彼らのアートの原点が、ユートピアのアイデアと手を取り合っていることがわかります」。

Anna Molska: Tanagram, 2006 – 2007, Single-channel video (b/w, sound), 5:10 min, © the artist

「20世紀初頭、文化人類学者、心理学者、社会学者は、身体やムーブメントの刻印は、精神文化によって与えられていると想定しました。この展覧会は、それらの影響と遺産のひとつの理想的な表現方法である。私は、そう考えています」。

数年前、ハイケ・ムンダーにインタビューする機会があったが、彼女はこの美術館の戦略でありミッションである オン ゴーイング アート プロセス on going art prosess について、以下のように解説した。

「アートは、常に社会とつながっています。世界にリンクして、外に向かって開かれたものです。ですから、政治にも、経済にも、歴史にもつながっているといえます。アートを人々や社会に問いかける。人々が考える、感じる、刺激される。あるいは、幸福な気分になる。それが、美術館に反映され、私たちは、また問いかける。その繰り返しは永遠に続きます」。

Anna Molska: Tanagram, 2006 – 2007, Single-channel video (b/w, sound), 5:10 min, © the artist

「美術館の活動が、地下に根を張っていくとイメージしてください。やがて、木になる。花が咲くかもしれない。広大な森ができるかもしれません。素敵だと思いませんか。それが、私の考える オン ゴーイング アート プロセスon going art prosessです」。

While bodies get mirroredは、オン ゴーイング アート プロセスの地下鉱脈に根を張り巡らして煌めいている、現時点での集大成のグループ展であると解釈できる。

この展覧会の提示するユートピアのなかで、私自身が反射を感じる奇妙な幸福感があった。

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While bodies get mirroredを構成するアーティスト

アネタ・モナ・チシャ Anetta Mona Chisa 1975 ルーマニア/ マヤ・デレンMaya Deren&nbsp 1917 – 1961 ウクライナ/ウィリアム・フォーサイス William Forsythe 1949 アメリカ / ジュリアン・ゲーテJulianGoethe 1966 ドイツ/デリア・ゴンツァレツDelia Gonzalez 1972 アメリカ/ バベット マンゴルト Babette Mangolte 1941 フランス /アンナ・モルスカAnna Molska 1983 ポーランド/ ケリー・ニッパー Kelly Nipper 1971 アメリカstyle/ポウリナ・オロウスカPaulina Olowska1976 ポーランド/ シルク・オットー・クナップ Silke Otto-Knapp 1970 ドイツ/マイ- テュ・ペレ Mai-Thu Perret 1976 スイス/ ハンナ・シュヴァルツ Hanna Schwarz 1975 ドイツ/ マルティン・ソトー・クリメント Martin Soto Climent 1977 メキシコ/ルチア・テュカソファLucia Tkácová 1977 スロバキア

5月30日まで

https://migrosmuseum.ch/

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ジェニー・ホルツァー展 フラッシュ

バイエラー財団美術館のジェニー・ホルツァー展では、企画意図の一環であるのか、写真撮影が許されている。

話題になった、レンゾ・ピアノの建築とのコラボレーション。ジャコメティ、ピカソ、マックス・エルンスト、そして、ネオンなど屋外広告を表現媒体にした時期もあるアンディー・ウォーホルなど。財団のコレクションのなかからホルツァー自身がキュレーターともなって選んだ、これら作品との対話がここにある。


カタログを買うと、ホルツァーのメッセージがデザインされた、美術館オリジナルのバッグがついてくる。

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ジェニー・ホルツァー展 バイエラー財団美術館

© 2009 Jenny Holzer, member Artists Rights Society (ARS), New York / ProLitteris, Zürich Photo: Vassilij Gureev

チューリッヒからバーゼルまで、直行で1時間弱。アートや時計のフェアでしばしば名前が登場するが、バーゼルは、中世の時代から学芸や文化の中心地として発達してきた古い都市だ。旧市街やライン川沿いに独特の優雅な趣きがある。
バーゼルの国鉄駅は、ネオバロックのファサードを持つ国境の駅。ドイツ、フランス、スイスのボーダーがここで接する。

駅からトラムに乗って、郊外のリーヘンRiehenへ。世界に美しい美術館はたくさんあるが、大きな池にゆったりと水を湛えた、このバイエラー財団美術館の静寂や気品は、美術を鑑賞するための心を穏やかに迎えてくれる。
世界的建築家レンゾ・ピアノ Renzo Pianoの作品。

バイエラーは、丁寧に収集されたコレクションの素晴らしさはもとより、ヨーロッパでも、極めて質の高い企画展を展開することで広く知られる。アート・バーゼルの会場で、毎年、必ず入口から右手、最初のブースを持つのがこの美術館だ。

年を越えて開催されている展覧会 ジェニー・ホルツァー Jenny Holzer。あらためて言うまでもなく、現代の最も有名な作家のひとり。90年のベネチア・ビエンナーレで金の獅子賞を受賞したが、この評価以降、彼女の社会性、政治性が強く、なおかつ詩的な言葉をあふれる波のように伝達していくという制作活動を、より大きなフィールドへと発展させていった。

1950年、アメリカ オハイオ州生まれ。LEDの電光掲示板でフレーズを流すなど、近年は、各都市でプロジェクトを組んで作品を作り上げ、しばしば街を媒体として表現する。
今回の企画展では、チューリッヒでは、旧市街リマト川を見下ろすリンデンホフLindenhofの丘の壁に。バーゼルでは、カテドラル、SBB駅構内、シティホールなど。石畳に、教会の聖母像に光のメッセージが走り続けた。

© 2009 Jenny Holzer, member Artists Rights Society (ARS), New York Photo: Serge Hasenböhler

70年代後半のテキストを含め、80年代以降の彼女の全分野における主要作品で構成。とりわけ、ヨーロッパでは未発表だった作品を含め、近作にフォーカス。LEDのインスタレーションはもちろん、絵画、オブジェなどを展覧する、スイスでは初めての大規模なショーだ。

また、バイエラーならではの思考のしなやかさであるが、ホルツァーの作品と影響し合うという意味で、財団のコレクションから、ジャコメティ A. Giacometti、ピカソ P. Picasso、マレーヴィチ K. Malevich、ベーコン F. Baconといった作家の作品が選ばれ、インスタレーションから移動していく間に、あるいは、同時に、全く異質なアートにも会うことになる。
1月24日まで。

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