毎年6月に開催される世界最大のアートフェア、アート・バーゼル。北南米、ヨーロッパ、アジア、そして、アフリカ。およそ300のリーディングギャラリーが一堂に会し、コンテンポラリーから現代アートまで、2500人以上のアーティストの作品を展示、販売する。
6月10日より開催。
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初めてパリへ行ったとき、迷わずクーニャンクールの骨董市を予定に組み込んだ。さすがに、わくわくする宝物がそこらじゅうに転がっていた。バロックのテーブルもベルエポックのグラスも、あまりにも無造作に次々と現れた。
椅子を探していた。これはと思しきものを眺める。家に連れ帰って、いつもの空間に置かれた姿を想像する。
違う。どうしても、違う。線もボリュームも、日本の部屋には強すぎて、バランスを取るのは到底無理だ。
もう諦めかけていた時、ある店先で椅子なら屋根裏部屋にまだたくさんあるといわれ、昇って行った。そこにいたのが、彼女である。アールヌーボーとデコの端境期に作られ、微妙にその流れを感じさせる。
やがて、日本からアジアへ。そして、スイスへ。私につきあってもらうことになる。
チューリッヒへ移動したら、きれいにしよう。ヨーロッパの家々できちんと修復されたアンティークの椅子を見るたびに、そう思うようになっていた。
3年前の初夏。ご近所の骨董屋のご主人は、一目でこの椅子を気に入ってくれた。「フランスから。そんなに長い旅をして、スイスへやって来たんだね」。恐らくは、アフリカのどこからか運ばれたであろう、黒檀で作られていた。
地図をいただき、紹介された生地屋さんへ。素材のイメージはすでにあったので、無地のものをいくつか並べ、一番好きな色を選んだ。織物の用語で、縁飾りは、「ギンぺ Gimpe」と呼ぶそうだ。
骨董屋へ戻り、生地を見ながらご主人と足の色を探した。塗り替えることにやや抵抗があったものの、結果的にはこれで良かった。
2ヵ月待った。
「この椅子のデザインがこのあたりではとても珍しくて、いろんな人が見にきていたんですよ」
解体された椅子から100年前のスプリングは取り出され、新しく入れ替えられた。組み立て直し成形し生地を張り、最後に背と足を塗り上げるまで、4人の職人さんが分担したと聞いた。
言語圏が違うとはいうものの、この椅子がすんなりとなじむ風景が、確かにここにはある。
こちらの椅子は長い長い旅をしてきたんですね。
職人さんたちの手によって修復され、これからも使い続けられていく・・、素敵だなぁと思いました。
石畳が似合う椅子ですね、曲線がとても綺麗です。
ありがとうございます。
この線と質感の持つ色っぽさにほれ込んで、求めたのだと思います。