この街で、夜、子どもが歩いているという光景は、まず見かけない。
しかし、今度の土曜日だけは、特別。
今年10回目を迎える、ロング・ナイト・ミュージアム Die lange Nacht der Mussen。
市内のほとんどすべての美術館で、現在開催中の展覧会を中心に、これに連動する体験型のワークショップやガイドツアーなど、独自の企画を、ロング・ナイトというよりも、オール・ナイトで公開する。
チューリッヒ大学のボタニック・ガーデンや連邦工科大学(ETH)。動物園でのレクチャーや小劇場のパフォーマンス、コンサートなども開かれる。
子どもも大人も、1枚のチケットで、アートからアートへ。ハシゴを楽しもうというプログラム。
電車もトラムも、番外編のスケジュールで走っている。
9月5日、夜7時から午前2時まで。
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25歳。パリでカール・ラガーフェルドに見出されたことを契機に、急速に頭角を表し、スター写真家へと駆け上がっていった、ミッシェル・コント Michel Comte。
その華やかな経歴を眺めながら、スリリングでセクシーで、ぎりぎりの緊迫感がみなぎるいくつもの撮影エピソードが、オーバーラップする。
チューリッヒ生まれのコントは、04年に、ウォーター・ファウンデーション The MICHEL COMTE WATER FOUNDATIONを、この地に設立した。また、ライフワークとして、世界の紛争地帯からのフォトルポルタージュも並行させている。
スタイルを生みだしてもそこに留まることがなく、新たな手法と切り口を鮮やかに見せ続ける、天才。
ミッシェル・コント30年の仕事を、360度の視野で回顧し、次、を提示する大規模な展覧会が、チューリッヒのデザイン・ミュージアムでスタートした。
2010年1月3日まで、というロングランだ。
Photo: デザイン・ミュージアム チューリッヒ MUSEUM OF DESIGN ZURICH
MUSEUM FÜR GESTALTUNG ZÜRICH
“ミッシェル・コント 30年の軌跡” への1件のフィードバック
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カテリーナ・フリシュ Katharina Fritsch。
彼女の手にかかった三次元のイメージは、新たな命が波打つ空間で、欲望と恐怖という人間の根源的な心理を揺さぶる。
新作は、奇妙な現代のエレジー。
ダイビングスーツを着た男は、おもちゃのように、タコの触手にからめとられてしまった。
Photo: チューリヒ美術館 Kunsthaus Zürich
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チューリッヒの街には今、いたるところに巨大な植木鉢が出現している。
初夏から始まったキャンペーン、ガルテンシティ チューリッヒ 2009 Gartencity Zürich。アートとデザイン、植物と自然、都市と環境の融合をテーマにした、チューリッヒ観光局によるユニークな企画だ。
植木鉢は、ガラス繊維強化ポリエステル。高さ150cm、直径120cm。内外から参加したアーティスト達が制作した。
映画「エイリアン」でおなじみのスイス人アーティスト、HRギガー HR Gigerや、ドイツのハンス・ラングナー Hans Langner。ミラノのブレラ国立美術学院 Accademia di Breraからは、生徒と教授による作品も見られる。
チューリッヒ空港から街の中心へ。特に、中央駅から始まるショッピング街、バーンホフ・ストラッセから金融の中枢、パラデ・プラッツまでは、ハイライトのひとつ。ここから、湖へ、リマト川にほど近い石畳の旧市街やオペラ座へと、人々を誘導するように作品が配置され、その数は街全体で優に300を超える。
夾竹桃、椰子、はなみずき、極楽鳥、もみじ、いちじく、トチの木・・・
30種類以上の植物が植えられ、通り過ぎるたびに異なる日々の変化も、4ヵ月という長期キャンペーンを飽きさせることがない。
一年の中で、最も美しいこの季節。色とりどりの花を咲かせて、街はすっかり不思議なガーデンになった。
登場するアートは、年ごとに変化しているが、オリジンは、1998年の牛、カウパレードに遡る。グラスファイバーで作った400頭の牛にアーティストが思い思いに色をつけ、それを街中に飾った。この牛のボディペインティング、予想を大きく超えて大変な評判になり、牛の数はキャンペーン中に800頭にもなったそうだ。
しかも、シカゴ、ニューヨーク、ヨーロッパ各地と世界中に拡大し、東京丸の内でも、昨年までに3回、牛が現れた。
その後、地元チューリッヒでは、牛からベンチ、テディベアへと変遷をたどり、今年の巨大植木鉢へ。
面白いことに、このイベントが始まった98年あたりは、チューリッヒが現代アートの拠点として注目され、世界中からアーティストが移り住み、活動するようになった時期とちょうど重なる。
街のマーケティングを考えた時、「牛」というブランド力と、波に乗ってきた現代アートの力を使うということは、多分、自然でさえあっただろう。
そもそも、チューリッヒは、ダダ発祥の地。前衛の土壌がある。
子どもから老人まで。すべての人に向けられたアートと植物から届くメッセージは、やさしい。
アートが距離をぐっと縮め、人に、社会に語りかけるフックとなって、街をダイナミックに広告する、ガルテンシティ チューリッヒ2009。
自然の豊かさ、身近さ。サステナブルな街として、チューリッヒのイメージを強化しようとする、より積極的な観光誘致を核に据えつつ、同時にこの街の持つ斬新な魅力を、世界に向けて打ち出すブランド戦略の展開だ。
チューリッヒには、日本のようなコンビニは、ない。国際都市でありながら、時間は東京の数倍ゆっくり流れている、と感じるだろう。
しかし、ここでもやはりiphoneは大ブームだし、携帯とインターネットの発達で、情報はどんどん個別化されている。
一方、コミュニケーションがよりパーソナルになっていく反面、それでも、人は肌や声の温かさが好きだし、時には、踊りの輪に入ってみたいとも思うものだろう。そんなちょっとした興奮や感動は、安らぎや幸福感と隣り合わせになっている。
仕事人が、きびきびと歩いている。芝生で日光浴する若者がいる。お隣りのおばあちゃんが、猫の話をしている。旅行者とすれ違う。
ありとあらゆるジャンルの人々が、街という装置を媒介として、同じ空気を共有体験をしていると考えると、コミュニケーションの未来に希望が見えてくるような気がする。
何だか、楽しい。
9月20日まで開催
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毎年6月に開催される世界最大のアートフェア、アートバーゼルは、今年40歳のビッグバースデーを迎えた。
世界中の800を超えるギャラリーのなかから厳正に選ばれた、29ヵ国、300を超える超一流のギャラリー。およそ2,500人のアーティストの作品が並び、61,000人が訪れた。
会場のほぼ正面に置かれた立体は、チューリッヒのギャラリー、プレゼンフベアPresenhuberから。ヴァレンティン・キャロンVALLENTIN CARRONの作品、初夏の真っ青な空に向かってそびえる巨大な黒い十字架だ。
スイスの新聞NZZ(Neue Zürcher Zeitung) は、「まるで、アートバーゼルの誕生日を墓場に運ぼうとしているかのようだ。しかし、不幸な出来事は起こらなかった」と、経済不況の影響をほとんど見せない大成功を報じた。
ジーンズでぶらっと現れたブラッド・ピットやチューリッヒ在住のサッカープレイヤー、グンター・ネツェー。ナオミ・キャンベルとカール・ラガーフェルドのツーショットは、プレビュー翌日に世界に流れた。ロシアの大富豪ロマン・アブラモヴィッチ。MOMAやポンピドー、ルーブルはもちろん、ほとんどのメジャーな美術館から訪れた館長たち。地球のあらゆる場所から、トップクラスのコレクターがプラベートジェットで集まった。
昨年と比べるとアメリカのギャラリーがわずかに少ないものの、それでも、Blum & Poe、Matthew Marks Gallery、Richard Gray Galleryなど、枚挙にいとまがない。
さすがに今なお大きな磁力を持ち、全体のクオリティが引き上げられていたのは、数も多かったが、ベルリンのギャラリー。例えば、nuegerriemschneider、Esther Schipper、Galerie Max Hetzler、Galerie Eigen + Art。ケルンのKewenig Galerie、ミュンヘンのGalerie Bernd Klüser。
ロンドンからの常連、White CubeやStephen Friedman Gallery。バスキアとミロがビビッドに並ぶパリのGalerie Hopkins-Custot、ハンス・ベルメール、ピカビアなど、やはり巨匠をそろえるGalerie 1900-2000。
メキシコ・シティのKurimazuttoのレベルの高さも、際立っていた。
日本からは、今年も小山登美夫ギャラリー、ギャラリー小柳、SCAI THE BATHHOUSE 、シュウゴアーツ、Taka Ishii Galleryが出展した。
隣接するArt Unlimitedでは、作家、作品ごとに展示。絵画はもちろん、写真、ビデオワークなどのインスタレーションや巨大な立体。ありとあらゆる可能性を提示する。
奈良美智の作品、廃材で組み立てた小さな家Torre de Málagaに、出たり入ったり。絶えず人が集まっていた。
ところで、チューリッヒがパリ、ロンドン、ニューヨークと並ぶ現代アートの拠点であることがあまり日本では知られていないが、アートフェア開催地バーゼルとともに20世紀アート史上、とりわけ1910年代半ばから重要な活動を展開してきた都市である。そのチューリッヒ
からは、Hauser & Wirth Zürich、Peter Kilchmann、May36などが、やはり意表をついた企画を見せた。
Bruno Bishofgerは、アンディー・ウォーホルAndy Warholの「Big Retrospective Paintin 1979」1点だけを展示するという作戦だった。207×1080cmの作品が壁一面にあり、座って観ることができるようにと椅子が数脚置かれた。プレビュー以前から、誰が求めるのかと地元でも大きな話題になっていたが、ちなみにお値段は、80ミリオン スイスフラン。約70億円。
終了後、ギャラリストたちから多くのコメントが発表されている。
チューリッヒのBob van Orsow は、新聞のインタビューで語った。「アートバーゼルは、世界中のあらゆるアートメッセのクイーンなのです。ギャラリーは、クイックなお客様を期待していませんし、また、どこかのギャラリーで何か購入したかどうかなど、誰も尋ねません。そういうことを好まないのです」。
しかし、この女王は、気高く美しく、とても頭がいい。鑑識眼にずば抜け、時代を読み、市場をリードするマーケティング力に長けた、真摯でダイナミックな戦略家である。
会場1階は、入口の右側1つ目のブースがバーゼルの美術館「バイエラー財団」で極めて格調高く始まることもあるが、フロア全体の空気にノーブルな緊張と知的な抑制が漂う。
ひとつひとつのギャラリーのブースは、明日そのまま企画展として、世界のどのような国際都市ででもドアを開けられるほど、実にパワフルなショウを見せる。成功しなければ、来年は登場できないかもしれない。それだけに、どのギャラリーを見てもコンセプトが強く、明快であり、テーマ性がある。それが観る側を次々と挑発してくるのだ。
アート40バーゼルは、控え目な期待に反して巨大な成功をおさめたと評価される。売上を憶測する数字はまだ飛び交っている。
アーティスト、トップコレクター、キュレーター、メディアなど、現代アートに関わる様々な人々が集まり、新たに出会う。そのような最先端の交流の場でもある。
時代の大きなうねりが起こっているようだった。
去年とも一昨年とも違う。特に、ギャラリストの表情に、異質な何かが見える。
プレスリリースを読み、そのヒントを発見したように思う。
「今回のアートバーゼルは、アートマーケットがそのルーツに回帰したことを目撃しました。知識、サステナビリティ、そして、芸術に対して真面目で真剣であること。これらが、最前線に戻りました。プログラムを進行したギャラリーは、この現象から大きな利益を得たことでしょう」。Mathias Rastonfer Galerie Gmurzynska, Zurich/St.Moriz/Zug
会場内Photos by Art 40 Basel
https://www.artbasel.com/
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