ラヤトン 無限の森へ

夕方から、雪が降って来た。

椋鳥は、きっと風向きが変わる前に帰っただろう。

私の机の前に見えるブナの木は、縦横に伸びる細く黒い枝に雪をのせて立っている。

夜が来る。
今日は、アドベントのキャンドル、4本すべてが灯る日だ。

ラヤトンRajaton 。面白い響き。北欧、フィンランド。六人組のアカペラ・ボーカル・グループの名前。

私の友人の何人かも、そこから来た人たち。薄い茶色や白っぽい金髪。青い瞳。大人になっても透きとおる肌を持っている。物腰のやわらかさが印象的だ。
冬になってラヤトンの声を聞いたとき、彼女たちを思い出した。

知らない言語は、きれいな声で語られると音楽のように聞こえ、その国の自然が見えてくる。それが魂を揺さぶるような歌になれば、地球に広がる。
意味が、言葉を超えるから。誰でも心でわかるから。

世界で静かに伝えられている、ラヤトンの歌声。
おそらく自然への謙虚さから生まれる、親しさ。森羅万象、聖なるものが近づいてくる、安らぎ。
そっと目を閉じ、しばらくそこに棲んでみる。

NHK世界里山紀行「フィンランド・森とともに生きる」、2011年春に公開されたドキュメンタリー映画「森聞き」。ラヤトンは、それらのテーマ曲を奏でている。

「森聞き」は、森と共に人生を送ってきた老人たちを訪ねる高校生が、森の話を聞きとりながら、人について、自然について、社会について考える過程を追っていく。
日本各地の森のなかで、ラヤトンの歌声は、谷底へ降りてゆき、山にこだまし、川の水と戯れる。人々が肩を寄せて笑うその姿も、森の一部であると教えてくれる。

「ラヤトン 無限の森へ フィンランド・アカペラの響き」
これは、彼らの12枚のCDから15曲を選んで製作された、CD+絵本。

風の声、山の声、光の微笑みや雪のきらめき。軽やかな蝶の羽音。それら多くはフィンランド語の歌だ。

フィンランド文学者、上山美保子さんのすぐれた超訳。三田圭介さんが描く、豊かでやさしい森の世界。柴田昌平監督による編集。丁寧に編まれた手作りのあたたかさが、ピュアな歌声にふさわしい。美しい絵本だ。

ページからページへ。
私が見つけた森の精霊は、かくれんぼしながら飛びまわっている。

クリスマスプレゼントにしても素敵だけれど、ヴァレンタインに手渡すというのも、なかなかスマートだと思う。

「ドビンの花咲く谷間 Dobbin’s Flowery Vale」というアイルランドの古謡は、「森聞き」で最初の音を聴いた瞬間、いったい何が起こったのかと思った。ピーンと、澄みきった天までとどく歌声は、野性の気高い精神を解き放つ。

この歌を、ユーチューブで見つけた。
http://www.youtube.com/watch?v=Ucpx11Xfpbk&feature=player_embedded

「ラヤトン 無限の森へ フィンランド・アカペラの響き」

2,850円+税

プロダクション・エイシアから、直接お求めになれます。
https://www.asia-documentary.com/rajaton/index.html

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